第2章 しろつめくさ×秀吉
繋いでいた手を引いて導いてくれる秀吉さんの体に寄り添いながら歩き出し、大通りの人の間を上手く縫っていく。その野原に向かうに連れてだんだんと道幅も狭まり、喧騒も薄れ…。さっきまでと打って変わって静かな世界が広がる。
辿り着いた野原を埋める純白の正体は、雪ではなかった。
「なんだ…これ?」
「もしかして…シロツメクサ?」
白くてまん丸な小さな粒が一面に広がる。近づいてよく見ると、現代でよく見かけたあの花だった。
しろつめくさ?と聞き返す秀吉さんの反応を見るに、この時代には馴染みのない花なのかも。それに、こんな人気のないところにひっそりと咲いているから、町の人にも知られてないのかな。
「花だよ、秀吉さん!雪じゃなかったね。」
「へぇ、初めて見た花だ。不思議な形だが…小さくて可愛いな。」
秀吉さんがたくさんある花のうちの一つを摘んでマジマジと見つめる。現代では咲いているのが当たり前で気にしなかったけど、確かに独特の形をしているなと思う。
あ…そういえば、この花だからできることもあったっけ。
「秀吉さん、この花を使って冠が作れるんだよ。」
「冠?どうやって作るんだ?」
「こうやってね、一つずつ結び合わせていって…」
幼い頃遊んだ記憶を引きずり出して、白い連なりを伸ばしていく。久しぶりに作るから、手際よくいかなくて時間がかかっちゃうな。
「なるほどな…面白い。ちよ、貸してみろ。」
「えっ?うん…」
差し出された手の上に、まだ幾つか結っただけのそれを渡す。秀吉さんは足元の花をプチリと摘み取ると、私が教えたように続きにどんどん連ねていく。
「すごい、早いね!」
「見様見真似だから、うまくはできないかもしれないけどな。」
私より大きな手なのに、器用に繋いでいく。その姿になんでもできちゃうんだなぁと感心するとともに、真剣な横顔が格好良くて見惚れてしまう。
「…で、ここを結べばいいのか?」
「うん、輪っかになるようにするんだ。」
「よし…こんな感じで完成か。ちよ、こっち向けるか?」
顔を向けると、出来たばかりの端正な花冠が私の頭にふんわりと乗せられる。その手がそのまま優しく頬に添えられるから、熱が集まってくる。