第6章 文化祭 *
携帯を見れば、侑の名前。
「出ないのか?」
「あっ、うんん後で掛けるから大丈夫」
携帯から目を逸らして見送ろうとすると、聖臣は、じっと見つめて思案している。
「コール・・・長くないか?」
「そう?こんな夜にだれかな?」
恍けてみても聖臣は、誤魔化せない。
「宮侑…」
「えっ?なんで・・・」
「そんなびっくりすることないだろう?それとも‥」
聖臣に腕を取られて、コールがなる携帯に手を伸ばす。
あっダメ!侑君が掛けてきているのバレる。
聖臣より手を先に伸ばしても、やっぱりリーチ差で取られ、その反動でソファに二人共傾ていく。
「はい…」
『……お前誰や?』
「そっちこそ、こんな夜中に何のようだ?」
『はぁ?沙耶いないんか?』
スピーカーにして勝手に出た聖臣と侑君が、電話越しでケンカ腰になっている。
「ちょっ聖臣返して、勝手に電話でないで!」
慌てて携帯を取ることも、聖臣の胸板に片腕で強く抱きしめられて、身動きが取れない。
『沙耶!そこにいるの沙耶か?じゃ今で出ているのって佐久早君か?』
「そうだけど?」
『あのなぁ~人の携帯を勝手に出てプライバシーの侵害やぞ』
「コール長くてうざかったから…それに沙耶が、隠し事しているみたいだったからお仕置きも兼ねてる」
えっ?嘘?夜中に掛けてたの知っていた?いやいや、家に帰ってきてから掛けてないし、何で?
「俺が知らないとでも思っていた?沙耶、甘いんだよ。
眠れないからって、南條先生から処方してもらっていただろう?
睡眠薬の使用数量が、一時使わない日あったからもしかしたらって思ってたけど」
手術した数日後、寝れない事を先生に相談したら、内緒で処方して貰っていた。
誰にも知られたくなかったのに、聖臣は知っていたんだ。
『どういうことや?沙耶、睡眠薬なんて聞いてない。
なんで言わんのや?まさか、土曜の夜だけ飲んでなかったんか?』
もうダメだ…。
黙っていると聖臣から、深い溜息を零れると自然とビクつき震えだす。
「大丈夫だから、怖がるな」
よしよしと背中を撫でられると安心し、聖臣の服をギュっと握りしめる。
「隠しててごめんなさい」
今さら謝っても無意味なのに、それでも二人にちゃんと話すべきだと思えた。