第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
「貴方は、俺と宮侑のどちらかを選ぶと思っているんですか?」
「選ぶ?言葉に置き換えればそうなのかもしれないけど、私は、どっちがあの子にとって居心地の良い場所になるのかってことよ」
『「俺に決まっている」』
宮侑と重なる言葉。
互いに思っている事、心底相手にしたくない。
「被せてくるな」
「なんやて、そっちが被せてきてるんやろ?あぁっもうえぇ、そこじゃない。
沙耶の居心地のいい場所を作って、閉じ込めておくのも一つやな」
「何言っている?閉じ込めるって、沙耶をどうするつもりだ」
「言葉の綾や、でも絶対とは言い切れんけどな。
今日は、帰る…ほんなら次会うのは、沙耶の退院したときやな」
不敵な笑みをして、宮侑達は帰っていった。
手に握る感触は、震えていた。
沙耶をアイツに奪われるじゃないかと焦る気持ちと恐怖だ。
あの後、元也と交代で沙耶を見ることにした。
家に帰れば誰も居ない空間。
思いっきり頭にシャワーをぶっ掛けて、モヤモヤした感情を無くすように浴びる。
ため息を付けばサッサと終わらせ、沙耶の傍に行きたくて、中半髪を乾かさず家を出る。
起きた沙耶には、『乾いてない』って怒られたけど、それ以上に宮兄弟を気にしている事が気になっていた。
「我慢の限界・・・」
髪を触る沙耶の手を掴んで、触れるキス。
でも、頭の中は宮侑の言った言葉がリピートする。
『沙耶の居心地のいい場所を作って、閉じ込めておくのも一つやな』と。
渡せない、渡したくない。
ドロドロした感情が、埋め尽くしコントロールできていない。
この感情は…嫉妬だ。
奪われる恐怖も焦る気持ち以上に、沙耶に対す執着したアイツに対しての歪んだ形。
閉じ込めたいのは、俺の方が大きいのにな。