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触れる度に愛を知る【ハイキュー】

第1章 呼吸


「向うでの宮さんの評判は、すごいですよ。

新人教育から始まり、患者さんのケアーも完璧。

頭の回転が早いから、迅速に対応出来るってそりゃもう大絶賛」

「昔から俺の次に頭よかったけど、テキパキねぇ想像つかない。あいつが戦力になるのかね」

「でも、奥さんにとっては強い味方だと思いますよ」

うん?奥さん?何それ!誰のこと?

「奥さんなんて言うな…遥とは、結婚自体してないんだ。

…恋人だっただけだ …」

「そうかもしれませんけど、婚約までしてたんでしょう?」

「…昔のことだよ」

少し声のトーンが低くなるその医師に、繋がれた手は強く握られる。

「本当貴方は、昔からそうですよね?肝心な所で逃げる癖、治してた方がいいですよ」

「お前に言われたくない」

「まぁ、これは親友として言わせてもらいますけどね、事故があった時は、大惨事で他にも巻き込まれた患者さんも亡くなられた人もいたんだよ。

その絶望的な中、必死に遥さんの名前呼んでる姿を見たらこの人、もうしかしてって思いましたよ。

案の定、あの遥さんだと知ったときは驚いたし、まさかお子さんまでいたなんて。

悲惨な運命だと思えたけど、それも運命だったかもしれないって」

静寂な病室に機械音と自分の呼吸。

耳を傾けるだけじゃなくて、目を早く開けてみたい衝動に駆られる。

「運命?これが?あいつを…置いて海外に行った結果がこれだ。

結局、あの時と一緒で何も救えてない。ありえないだろう?」

切なく心が苦しくなるような声を出している先生。

母とは、元恋人それも婚約までしていた。

じゃ私は?誰の子?

「じゃなかった事にするの?」

「何が?」

「その子です。先生によくに似てます」

「はぁ?何言ってのお前?なんの根拠に?」

「この間、遥さんの友人の方に会いました。

弁護士をしている方で、この事故の担当にもなっている人です。

確か…佐久早さんだった思います。

先生の事を見かけて、なんでいるのかって問われました」

「佐久早?誰だ?」

病室のドア開くと、ヒールの高い音がカツンカツンと聞こえてくる。

あぁ、この微かなラベンダー香り、聖臣のお母さんだ。

「相変わらずね…海外に行ってもバカは、バカだったわ」

いつもと違うおばさんの声が、冷たく響いた。
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