第5章 ふわりふわり揺れる思い
あれ?体がうまく動かない。
さっきまで、こんなじゃなかったのに…。
朝会った時に、聖臣から『世界で一番大切で好きな子』って言われキスをした。
中半頭の整理がついてない状態で、侑君と治君に会ってしまう。
治君や侑君にも『好きだ』って言われて、またキスされて…パニックになった私は、つい元也に相談していつものように聞いてくれるはずが、なぜだか怒られる展開になって。
元也も『好きだ』って言われて、更に頭パンクしてって何?…。
やっぱりモテキ?
いやいや違う…事故にあってこんな体になってみんな同情とかしているのかな。
それで、好きとか言ってくれたのかな?
モヤモヤするな、熱い…苦しい。
葵おばさんが、『大丈夫』って言ってくれるのに不安で押しつぶされそうで、今までこんな気持ちになったことがない。
南條先生が来てくれた時には、すでに朦朧としていてあまり記憶もない。
ピーピーと機械音が聞こえると、いつしか呼吸も大分マシになる。
「少し、気づかれでもしたか?
朝から訪問者が、多かったせいだな。
辛いなら辛いって言わないとこんな状態になるし、幸い今のところ熱が出てるだけみたいだから、抗がん剤を投与するよ。
少しチクっとするかもしれないけど、我慢しろな。」
抗がん剤?熱?
あぁ、熱いのはそのせいか?
もしかしたらって思ってたけど、皆に告白されて有頂天になってたからとか思ってたりもして、ダメだよね。
今の状態で”好き”って言われても、何も返せないのに。
『なんで?いいじゃない、縋りつけば。
みんな、どんな沙耶でも愛してくれるよ。
そうだ、試しに呼んでみたら?』
呼ぶって誰を?
『いつも呼んでいる人の名を呼んでみて』
もう一人の私は、悪魔のように耳元で囁く。
彼の名を呼ぼうとすると、病室の外で怒鳴り声が聞こえてくる。
「ほんと、アイツらここが病院ってわかっているのか、後で説教決定だな」
イライラしながら、注射針をトントンと叩いている。
「先生…怒らないで…あつ…む君とおさ…君は、悪くないの。
私が…外に…行きたいっていっ…たの。
きよ…おみ…もと…やも悪く…ない、わたし…のせいで…怒って…から…」
吃驚しならがも先生は、『お前は、優しすぎだよ』
と言われ、チクッと針が皮膚に挿す痛みに、耐えられず涙が零れた。