第4章 宮兄弟の愛し方
侑side
深い溜息をついた佐久早君は、俺の腕を離しても睨みつけてくる。
それも当然の結果だよな。
「本気?…お前らが、好きだって言っても沙耶は、そういう対象でみてない。
沙耶は、俺しか見てないけどな」
「なんやねんソレ? 佐久早君かて付き合ってもいないのに、自分の彼女みたいなこと言うのやめてくれんか。
それに俺は、返事も聞いてないしまだ何も始まっとらん」
「お前らはな、始まってないからそれまでだ。
お前らの気持ちとか正直どうでもいいけど、今日みたいに悪影響を与えるなら別だ。
沙耶を苦しませるならいらない、傍にくるな」
苦しませる?俺は、沙耶を笑わせて笑顔にさせるために来たんや。
今日も話をしながら、いっぱい笑っていた。
それは、無理とかじゃなくて自然とでる、俺の一番好きな笑顔だ。
これからだって、笑わして笑顔にさせてやるのが、俺達の沙耶への愛し方だ。
「下手な愛し方なんかせぇへんよ。
ずっと笑顔でいさせるし、ずっと笑わしたる。
これから、何が起きてもずっとや」
「そう…やってみれば無駄だとは思うけど」
ピリピリと緊迫した状態に達したとき、母親から声がかかる。
「あんた達、雰囲気が悪いわね。
それより、侑、治は、一旦ホテルに戻るわよ。
母さんは、夜勤を頼まれたからしばらくして戻るけど、あんた達は大人しくホテルにいてよ」
「なんでやねん、沙耶とこ行きたいやけど 」
そう母親に伝えて見るも、様子がおかしい。
沙耶の容体が、著しくないのか?それとも他に理由があるのか。
「あぁ~それは…」
「?」
「呼んでいるのよ」
「誰を?」
サムも俺も不思議そうに母親を凝視しているが、一向に本題を言ってはくれない。
「だから誰を呼んでんるや?沙耶に何かあったんか?
さっきおじさんは、大丈夫やって言っとったんやけど?」
母親の沈黙が長く続いたが、俺達の張りつめた間合いに観念したようで、はっきりと言った名前に驚愕した。
なんでや!と今だ、心の中でリピートしたまま。
ホテルに帰ってから大層な料理を目の前にしても、おいしいとは感じられんかった。
苦しくて眠れない夜を過ごしたのは、沙耶の事故の連絡を受けた以来2度目だった。