第1章 呼吸
自分が眠っている間、色々な事が起こっているの?
きっと聖臣も元也も怒ってるかな?
それとも、泣いて…はないよね。
両手は、誰かが握ってくれてる感じ…でも、眠っててもわかるよ。
右は、きっと元也だね。
だって高校生NO.1リベロになるって、聖臣のスパイクを受け続けている。
だから、いつも突き指や手の甲が腫れたりして痛そうにしてたけど、聖臣に負けないよう努力してたね。
それに、聖臣より断然社交的。
友達も多いし、聖臣の性格を考えて周りに気を配りながらフォローとかちゃんとしてるしね。
良きお兄さんって感じで面倒みが良いし、いつも優しい。
左は、聖臣。
中総体から注目された天才肌。
白鳥沢にいる牛島若利先輩を意識してはいるけど、彼と違ってパワーで押し潰すわけじゃない。
手首が、異常に柔らかくてその手首の動きでコースを打ち分けたり、とても取りづらい回転をかけたスパイクを打つ。
決めたことを人一倍追求してきた聖臣の努力を知っているから、皆んなに注目されるようになった。
あんなに無口なのにバレーをしている聖臣の姿は、誰が見てもカッコいい。
だから、昔から隠れファンが多い。
けど、潔癖症なとこもあって人混み嫌いだし、すぐ汚いって手洗う癖にカサカサじゃない。
日頃、手入れしてるからかもしれないけど、綺麗な手をしているんだよね。
幼い頃から、手を繋いでたからわかるんだ。
成長するごとに身長も手も大きくなって、いつの間にか抜かれてた。
昔は、あんまり背が変わらなかったくせに、今じゃ165センチの私なんか見上げないといけない。
歩いてても車とか来るとあの大きな手で引き寄せられて、スッポリ収まっちゃうから、変に意識しちゃうこともあったりする。
当の本人は、スマートに行動してるからかな?気にしてないし、寧ろ『ぼっ〜とするな』って言われ怒るけど、その後必ず頭を撫でてから、手を強く握って家に帰るまで離してくれない。
そういう時って、男の人だなぁってドキっとしてキュンってする。
それが、好きって感情なのかは未だにわからない。
聖臣が、頭を撫でてくれる時って心配してるか私が、不安に思ってる時にしてくれる事が多い。
だから、あの手は好き。
聖臣も元也も優しいから、いつも二人に甘えてしまう。
優しい二人の兄と妹って距離が、1番しっくりくるかな。
