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触れる度に愛を知る【ハイキュー】

第3章 目覚める瞳


あの日からまた数日眠り続け、いつもの聖臣達が、部活から帰ってくる時間。

「おはよう、沙耶。元也は、今日用事で来れないって」

なんだかいつもよりも優しく髪を撫でてくれる。

あっ、また溜息。

溜息つくと、幸せが減っちゃうんだよ。

「今日も返事なしか…沙耶…好きだ…小さい頃からずっと…。

早く目覚めて返事聞かせろよ。

あぁ、元也には悪い事したか。

アイツもお前の事好きだもんな。

こればかりは、元也でも譲れない」

何で眠っている時に告白するかな。

起きた時にしてくれればいいのに。

「沙耶…」

酸素マスクを外され、唇が温かい。

それは紛れもなく、聖臣とキスをしている。

温かい、優しいキス。

目覚めるまであと数秒。

でも…聖臣は、何も無くなった私を好きでいてくれるかな?

「沙耶、戻ってこい。

例え記憶がなくてもバレーが、出来なくてもずっと傍にいるから」

繋がれた手は、温かくて優しい音色に包まれて安心する。

当たり前だった聖臣達の傍にいる生活、こんな私でも傍にいたいと願う。

今の私を嫌いにならないで。

『大丈夫だよ。ほら、聖臣だって言ったじゃん。

記憶がなくても、バレーが出来なくても好きって。

聖臣の言う通り、記憶なんてない。

私は、バレーをやってない。

私は、知らない。

いつまで私は、思い出に囚われているの。

ほら、忘れるの…忘れて…私は目覚めるの』

涙が溢れて堪らない。

もう一人の私の影に頷きながら、涙を流した。

繋がれた聖臣の手を握り、開かれる光。

「沙耶?沙耶!!!」

ナースコールが響き渡る病室の中、先生や看護婦さんが駆けつける。

「白城沙耶さん、聞こえますか?

返事しなくてもいいから、分かるなら俺の手を握って」

南條先生が、手首の脈拍やバイタルを確認しながら、冷静に対処を行う。

まだ覚醒したばかりで酸素も薄いし、とてもじゃないけどしゃべれる状態じゃない。

言われた通りほんの少しだけ握った後、安堵の色をした先生は、破顔していた。

「目覚めてくれてよかったよ。

ちゃんと体を治して通常の生活に戻そうな。

俺達が、必ず外に世界に連れ出すから心配するな」

私は、頷きまた夢の世界に飛んでいった。
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