第9章 私のための無垢なドレス 2
「小エビちゃん、化粧してる?」
思わず口から出たフロイドの言葉にユウは小さく声を漏らすと、ソワソワと視線を彷徨わせ、恥ずかしそうにはにかんだ。
「……わかります?」
ユウはまるでテストの点数を教師がみんなの前で褒めたかのような、嬉しさを堪えているみたいな表情を浮かべる。
「うん、わかる。スッゲェ可愛いよ」
考える間もなくフロイドの口は勝手にそう答えていた。
ユウは目を瞬かせる。しかしすぐに、えへえへとグリムの後頭部に顔を埋めながらちょっと不気味な笑い声を上げた。
そんな姿ですら可愛いと思ってしまうフロイドは最早末期である。
場所は戻ってモストロラウンジ。
あと少しで開店時間ということもあり、店の中が騒がしくなる。
先程までかかっていなかった音楽もいつの間にか流れていた。
アップテンポなジャズが薄暗い店内をより大人な雰囲気に変える。
交流会で他校の生徒が来ているため、モストロラウンジは最近いつも以上に混む。正直スタッフは憂鬱だった。
スタッフが皆んな忙しくしている中、フロイドとジェイドは相変わらず席に座っている。なんなら「ドリンク欲しいんだけど」と注文までしてきそうな雰囲気だ。
ここにアーズルが居てくれたら彼らを注意してくれたのに。と、リーチ兄弟が怖くて何も言えないスタッフたちは思った。