第8章 私のための無垢なドレス
ヴィルは意外に思っていた。
ユウがあれほどメニューに食いついてくるとは思わなかったのだ。
どうせ初めだけで、1週間もすれば辞めたいと言ってくるに違いないと。
しかし既に1ヶ月。彼女が辞めたいと言ってくる気配はなし、ヴィルの言った事をよく守っている。
自分の言う事をよく聞き、努力をする年下の女の子。
これを可愛いと思わない男はいない。
ヴィルはいつの間にかユウをまるで自分の妹かのように可愛がっていた。
お金に余裕がなく、化粧品が買えないと言っていた彼女に自分の肌には合わなかった化粧水やら乳液をあげたり、仕事の関係で貰ったコスメなどを譲ったりした。
ヴィルから何か貰う時、ユウはいつも以上にニコニコしている。
グリムは思った。
何か気づけばユウが綺麗になっていると。
殺風景だったユウの部屋はカラフルな化粧品で溢れ、いつもいい匂いが漂っている。
髪も艶々だ。
ユウが30分くらい鏡に向き合っている。
グリムは彼女の膝の上に登り、ユウの顔を覗き込んだ。
「さっきから何してるんだゾ?」
「化粧をね、してるの」
瞼がキラキラと光り、頬が桜色に色づいている。
化粧をした彼女はいつもより大人っぽく、少女というより女性と呼んだ方が相応しい。
「どうかな?」
少し不安そうな表情で笑うユウ。
グリムはフンっと鼻を鳴らすと、「よくわかんねぇけど、大人っぽくみえるんだゾ」と言った。
お世辞を言わないグリムの言葉は何よりユウを元気付けた。