第8章 私のための無垢なドレス
「知っている奴もいると思うが、交流会の期間は1ヶ月ある。そして交流会の最終日にはダンスパーティーが催される」
ダンスパーティー。
その言葉にまた教室にざわめきが起きるが、クルーウェルが指示棒を教壇に叩きつけた為すぐにざわめきは治った。
「ダンスパーティーは必ずパートナーと参加しなければならない。
パーティー当日までにお前たちはパートナーを見つけるように。まぁまだ期間には余裕がある。他校の生徒が来るまでに精々自分磨きをしておくんだな」
クルーウェルは最後鼻で笑ったように言うと、教室から出ていった。
途端に教室は騒がしくなる。
「マジか」やら「面倒くせー」やら他にもいろんな声が教室を飛び交う。
そしてチラチラと感じる視線にユウは居心地悪そうに身体を縮めた。
きっと他校の女子を誘えなかった時や、断られてしまった時の保険として思われているのだろうと思った。
「ダンスって何を踊るんだ?」
「ワルツとかじゃね?」
「そんなの踊ったことない」
「オレだってねぇわ。なんか交流会の時の授業でダンスの授業があるらしいよ」
「そうなのか。詳しいな」
「まぁ、兄貴がいるからねぇ」
エースとデュースの会話をユウは黙って聞き流す。
未だチラチラと感じる視線。
ユウはこの視線を品定めされているかのような、そんな不躾なものに感じた。
まだ見ぬ他校の見目麗しい女子生徒(多分)。
そんな彼女たちには申し込む勇気がないからと、妥協でユウに申し込む男子生徒の姿をユウは想像した。
ただの想像であったが、これが凄い自分の中でも納得してしまう。
そしてこれではいけない。と、ユウは思い立った。
「私、綺麗になる」
独り言のように彼女は宣言した。
その言葉を聞いたエースとデュースは「は?」と首を傾げるが、その後顔を見合わせると「まぁ、頑張れよ」と気のない声援をユウへと贈った。