第7章 はだかのままのヴィナス
その日、ユウは飛行術の授業の補習を受けていた。
フロイドに拉致され、授業をサボってしまった為である。
飛行術の補習と言っても彼女は空が飛べないため、グランドの外周を走ったりするだけなのだが、それはそれでかなり辛い。普段運動していない人間の体力を舐めるな!と、ユウは声を大にして言いたい気分だった。
グランドに体育着に着替えて行くと、そこには2人の人影が。
自分以外にも補習の人がいたのか。と、ユウは少し安心した。
もう少し人影に近づくと、その2人が誰なのかが分かった。
ジャミルとアズールだ。
因みにまだバルガスは来ていないみたいだった。
アズールは飛行術が苦手だと言う話を聞いたことがある。しかしジャミルはいったいどうしたのか。
なんでもそつなくこなせる彼が補習を受けるなんて考え辛い。
ユウは歩きながら疑問に思ったが、兎にも角にも自分以外にも補習の生徒がいた事と、その生徒が知っている先輩たちであったことに彼女は胸を撫で下ろした。
そして小走りで彼らのもとに向かう。
「こんにちは、先輩方」
男子校では本来なら聞くはずもない鈴のような声が聞こえ、ジャミルとアズールはすぐに声のした方に振り向く。
「おや、ユウさんではありませんか」
アズールは箒を片手にメガネのブリッジを持ち上げた。
ちょっと気取った喋り方だ。
まぁ、ユウからしてみればアズールはいつも気取ったような喋り方なのだが。