第6章 やがて糸は火となり繭となる 2
ここで2人は疑問に思った。
何故、赤い糸が突然フロイドに見えるようになったのか。
何故、今まで触れず、勝手に伸び縮みしていたまるで幽霊のような糸が実体を持ったのか。
ユウとフロイドは少しの間無言で糸を見つめる。
「……何か、赤い糸が見えんだけど」
「……そうみたいですね」
「何で?」
「何ででしょう……」
「ぶっちゃけ邪魔じゃね?
めっちゃ不便」
「私、ソーイングセット持ってますよ。
切りますか?」
「え、酷い。それは酷い。
オレ告白したの忘れたわけ?」
「……冗談です。
クルーウェル先生に1週間もすれば薬の効果が切れるって言われて、今日で丁度1週間なんです。後もう少しすれば糸も見えなくなると思います」
「え、マジで?
むしろ存在感ましてんだけど」
「何ででしょう?」
「知らねぇ」
一陣の風がさっと吹き、2人の髪をばらばらと遊ばせる。
ユウは右手で髪を軽く整えるが、フロイドはそのままの状態だ。
先程まで2人の間にあった甘酸っぱい青春みたいな空気感は今ではすっかりなくなっている。
赤い糸のせいだ。
空がオレンジ色から赤色へ、そして紫色へと変わっていった。
夕陽の名残がほとんど消えつつある。もうすぐ夜がくる。