第5章 やがて糸は火となり繭となる
糸が見えるようになって今日で7日。
明日にはこの糸は見えなくなる。
そう思うと、ユウの気分は少しだけ上がった。
今日はフロイドには会いたくないとユウは思った。もともとあんなことがあった手前会いたくはないが、今日は特に。
フロイドの居場所は赤い糸ですぐにわかる。
なのでいつもはあまり視界に入れないようにしていた赤い糸を今日はよく確認した。
糸が床に着かず張っていれば近くにフロイドがいるということなので、糸がピンッと張るたびにユウは糸が伸びる方とは逆方向に向かった。
放課後。
糸を気にしていたお陰か、フロイドとは会っていない。
このままオンボロ寮へと戻れば今日は会うことはないだろうと、部活に向かうエースやデュースに別れを告げ、ユウは教室から出る。
「あっ……」
寮へ向かっている途中、冷蔵庫の中身がほぼ空っぽであることをユウは思い出した。
彼女が突然立ち止まり、声を上げたため一緒に歩いていたグリムは首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「冷蔵庫の中空っぽだったの思い出した。購買行かなくちゃ」
「それならツナ缶も欲しいんだゾ!」
「ツナ缶は買わないよ。だって沢山あるもん」
ユウはグリムと喋りながらきた道を戻る。
グリムはツナ缶を買わないと言われて、「ふな"〜!」と癇癪を起こすが、ユウはそれを無視した。
駄々を捏ねたって、癇癪を起こしたってどうにもならないことは世の中にあるのだ。