第4章 マザーとグースとお嬢さん
ユウの隣にジャミルが腰を下ろす。
最初にフロイドが座っていた場所だ。
ユウはソワッと身体を揺らした。
ジャミルは紙袋から弁当を取り出しユウに渡す。
ユウははにかみながら「ありがとうございます」と両手でそれを受け取った。
「あぁ、そういえば君に渡したい物があるんだ」
ジャミルは同じ紙袋から綺麗にラッピングされた長方形の物を出すと、「ほら」とユウに差し出す。
結構大きなそれは、厚さはそこまでなかった。
「えっ……あ、ありがとございます……。
何ですかこれ?」
ユウは別に誕生日ではないし、ジャミルにプレゼントしてもらえるような事は何もしていない。
ユウは首を傾げる。
するとジャミルは視線で「開けてみろ」と彼女を促した。
ユウはラッピングに手をかける。
ビリビリに破けてしまわないよう、慎重にセロハンテープを剥がした。
ラッピングを取ると白い箱が。それを開けると、中から白と青のアラベスク模様のトレーが出てきた。
ユウは「おぉ」と感嘆の声を上げる。
「ずっと渡そうと思っていたんだが中々タイミングが掴めなくてな。遅くなってしまった。
女性に物を贈ったことがないから、気に入ってもらえるか分からないが……」
「いえ、本当に凄く可愛いです。ありがとうございます!」
とてもお洒落なトレーだ。
ユウはそれを胸に抱きニコニコ笑う。
例えとてつもなくダサい柄であったとしても彼女は同じように喜んだだろう。
だって好きな人からのプレゼントだ。喜ばないわけがない。
ニコニコ。ニコニコ。
きっと彼女は明日、頬が筋肉痛になるに違いない。