第3章 コバルトブルーの怪物を飼っている 2
「そもそも普通は赤い糸が見えることなんてないんです。実際に運命の人と結ばれている人なんて一握りよりも少ないでしょう」
努力をしているのだ。みんな。
好きな人と結ばれる為に。たとえそれが運命ではなくても。
フロイドだって何となく分かってはいた。
でも子供じみた「そうだといいな」という願望が強く表に出てきてしまったのだ。
小エビちゃんがオレのこと好きだといいな。
「フロイドは、ユウさんの事が好きなんですか?」
ジェイドがフロイドに尋ねる。
先日モストロラウンジでの掃除中、ユウと赤い糸で結ばれているという話を聞いたフロイドはやけに機嫌が良かった。
しかしジェイドはこの時少し疑問に思っていたのだ。
だってフロイドは確かにユウを気に入っている様子ではあったが、それはあくまでお気に入りのおもちゃで遊んでいるような雰囲気で、そこに情欲など一切感じられはしなかったのだから。
「……わかんね」
ポツリとフロイドは溢す。
アズールは呆れたように「お前は……」
とため息をついた。
「好きじゃないって言われたら、何か冷めた」
「その程度で冷めるということは好きじゃなかったんでしょ」
「何ですかアズール。随分と詳しいようだ」
「えぇ、僕はこう見えて経験豊富ですからね」
「嘘おっしゃい。貴方が童貞なことは知っています。だいたいラーメンにあれだけ大量の酢を入れる男はそもそもモテません」
「酢は身体にいいんです。それに童貞なのはお前たちもだろ!」
ジェイドとアズールの言い合いを聞きながら、フロイドはユウのことを考える。
そういえば自分からサボろうと誘ったのに、1人置いてきてしまったことを思い出し、フロイドは少しだけ申し訳ない気持ちになった。