第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
そう言われてしまうとユウは困ってしまう。
確かにユウは飛ぶことが出来ないので、皆んなが空を飛ぶのを横目にバルガスが作った特別メニューを延々とこなしていた。
主に体力づくりを中心としたそのメニューは中学時代も特に部活に入っていなかった彼女にとってはかなり過酷なものだった。
「いえ、でも……私はグリムと2人で1人の生徒なので……」
不安げに視線を彷徨わせるユウ。
手を後ろに回し、指を遊ばせる彼女はまるで親に叱れている子供のようだ。
もし野郎がそんな姿をフロイドに見せれば「キモいんだけど」と、彼は気分を急降下させその男を絞めるところだが、ユウが女だからか何なのか、フロイドの機嫌は悪くはならなかった。
しかし誘いを断られるのは嫌だ。
フロイドは初め1人でサボる気でいたのだが、彼女を視界に入れてから彼の中ではユウと一緒にサボることが確定していた。
その為フロイドだって食い下がる。
「えー、小エビちゃんはオレの番なのにオレのお願い断るの?」
「……番?」
「だってオレたち赤い糸で結ばれてるんでしょ?」
フロイドのその言葉にユウは目を見開き、ヒュッと息を飲んだ。
足元ではグリムも「ふな"!?」と声を上げる。
何故、それを知っているのか。
まさか、フロイドにも糸が見えているというのか。
しかし食堂での様子だと見えている風ではなかった。
ユウは目を見開きながらフロイドを見つめる。
その間頭の中では"何故"が大渋滞していた。
そんな彼女の思いを知ってか知らずか、フロイドは両手をズボンのポケットに入れ、ニコニコと笑っていた。