第13章 夢みていたのおとぎ話の世界
その日、オンボロ寮へと思ってから、ユウは隣から聞こえるグリムの寝息を聞きながら考えた。
フロイドに言われたこと。
「小エビちゃんは帰りたいの」
目を瞑ると、思い浮かぶのはこの学園の皆んなのこと。そして家族のこと。
ユウは三姉妹の末っ子で、いつも彼女の服や、学校の授業で使う物(リコーダーや習字セットなど)はお下がりばかりであった。
しかし高校に上がると言うことで、父がユウに自転車を買ってくれた。
家から少し離れた高校は、自転車通学することになっていたからだ。
母はこれから毎日持っていくからとお弁当箱を。
姉たちは入学祝いに少し高めなリップクリームを買ってくれた。
ユウはそれが凄く嬉しかった。
何か凄いものを貰ったとか、そう言うわけではないのだが、初めて自分の物として買って貰ったそれらを大切にしようと思った。
一度家族のことを思い出すと、後はもうそればかりである。
楽しかったことや大喧嘩したこと。
今度家族旅行に行こうと約束していたこと。
この学園の皆んなのことはユウは勿論好きだ。フロイドのことだって他のみんなとは違う意味で好きだ。
しかしやはり彼女にとっての一番は家族であった。
帰らなくてはいけないのではない。
ユウ自身帰りたいのだ。
「私、故郷に帰りたいです。フロイド先輩……」
ユウはもう聞こえることのない返答をポツリと呟いた。