第1章 序章
目眩がした。
此奴はか弱い振りをして相手に牙を向けるための準備を着実に進めていたのだ。
味方などいない状態で1度だけ話を聞いた俺を信じて。
「情報は多い方がいい。天国先生が言っていたので…でも最近相手が避妊具外したがるので限界かなって…」
「もう、言うな。」
怖かっただろう
苦しかっただろう
思わず伸ばした手は少女の頭を優しく撫でた。
「ここからは俺の仕事だ。頑張ったな。」
今まで動かなかったガラス玉のような瞳に光が戻り薄い膜が張ったかと思えばそれは雫となって流れていく。
苦しかった心を溶かすように。