第5章 LAST DAY
ざわざわと人が集まる玄関を抜け、一足お先にと校門を抜け出す。前使っていた獄さんの事務所に向かうまでに一番近い道は使うことを禁止されてしまったから、人通りの多い駅前を経由して事務所に向かう。
歩きながらスマホを操作。
母の番号をタップすれば数コールで通話になった。
「もしもし、終わったよ卒業式。……そうそう。朝も伝えたけれど今日は獄さんがお祝いしてくれるって。…わかってるって。ちゃんとするってば。……ん、はぁい。」
通話を終わらせればポケットにスマホを入れて歩き出す。
通学用のリュックサックには卒業の証が筒に入って踊っていて、3年間の思い出が詰まっている。
3年間使ったこの鞄も獄さんが買ってくれたもの。
黒がいいと駄々をこねたわたしに「淡い色だと汚したくないから大事に使うだろ」って教えてくれた獄さん。
ピンクや白みたいな女の子って感じの色もあったけれどあえて選んだのはグレー。
落ち着いてるからって言い訳したけれどやっぱりグレーは獄さんを思い出すから好き。
そのリュックを踊らせながら、わたしは獄さんの事務所に向かった。