第4章 DAY 3
「そろそろ終わりな。」
お疲れさん、風呂はどうする。
聞かれたけれど急すぎてびっくりした頭がついていかない。
枕元にあるティッシュを取り指を拭き取る獄さんは本当に終わりにするつもりなのだろう。
「まってぇ…」
思わずすがりつけば獄さんは大人の笑顔でわたしの頭を撫でる。
「これで終わりだ。いろいろあって疲れてんだから風呂入って寝るぞ。」
わかってる。
産婦人科にも警察にも一緒に行ってくれた獄さん。
わたしが何をされたか知っているから体と心の心配をしていることも。
それでも…
「怖気付いたの、獄さん。それとも汚い女は抱きたくない?」
わたしは、今貴方に抱かれたい。
「なずな、やめろ。自分で自分を貶めるな。」
「じゃあ最後までシてよ!」
はじめて、初めて獄さんに声を荒げた。
「嫌なのっ!こんな汚い自分!」
ずっとずっと、獄さんを好きになってからずっと。
自分が汚くて、大嫌いで。
「お願いだから…」
きっと好きな人に抱かれたら、それだけでわたしは幸せになれる。
「俺はお前が思うより大人じゃねえぞ。」
獄さんの長くて男らしい指がわたしの頤を捉えると、顔を上げろと促される。大人しく顔を上げれば獄さんの顔が近づき雫が伝った頬を唇がなぞる。伏せた両の目尻に溜まる涙を吸い取ると獄さんの唇はわたしの唇を塞いだ。
「お前に関しては自制が効かねえし、嫉妬だってする。」
あんまり言いたくはねえけどな、と獄さんはふいと横を向く。
その横顔に手を添えると空いた親指で獄さんの薄い下唇を撫でれば獄さんは小さく息を吐き出し笑う。
「獄さん、すき。」
「知ってる。」
「すき。」
「おう。」
「わたしのものになって。」
そう、獄さんの両の頬に手を添えて伝えると獄さんは耐えきれないとでも言うように吹き出した。
「ナマ言ってんじゃねえぞ、糞餓鬼。俺のもんになるんだろうが。」
その日はそのまま獄さんに抱きしめてもらって眠った。