第3章 DAY 2
ぐわり、視界が揺らぐ。
ブランド物なんていらない。
お金で買えるものなんていらない。
私は獄さんの人生が欲しい。
でも、さっきの反応では獄さんは私のそんな話を本気で取ってくれない。
「じゃあ…お財布…ブランドとかわからないから一緒に選んでもらってもいい…ですか。」
そう伝えると獄さんの嬉しそうなわかったが降ってきた。
獄さん、知ってますか。
お財布ってね、スマホと同じくらいずっと肌身離さず持つ物なの。
それだけわたし、獄さんと一緒にいたいの。
そんな重たい気持ちで頭を撫でられていれば遠くから聞こえる鐘の音。
時計を見れば0時を回ったところで最後の一回の鐘の音だと気づいた。
「獄さん、時間。」
獄さんはわたしの頭から手を離すと腕時計を確認し再びわたしを見た。
「あけましておめでとう。なずなにとって節目の年、いい年になるといいな。」
「おめでとう、ございます。」
それ以上の言葉が出なかった。
獄さんが隣にいてくれたら私、一年どころかずっと幸せ。
幸せなの。
獄さんからの帰るかの声。
わたしはそれにこくりと一回、首を縦に振った。
車はまっすぐわたしの家に向かった。
肉まんも、買ってもらった温かいミルクティーも、わたしの心も
ひやりと冷えてしまった。
ねえ、獄さん。