第7章 Telephone XXX
「付けてないんだろうな……なら、お前は首輪をつけていなくても、俺の言うことを聞くペットになっている、ということだ」
私の顔は真っ赤になった。首輪をつけているからペットになっているのに、首輪をつけていないのにこんなことをしてるなんて。帰らなきゃ、と自慰行為を中断して立ち上がろうとすると、「待て」と言われた。
「なんで嫌がるんだ、素直に認めれば良い。首輪なんて付けてなくたって俺が欲しいと。もう、濡れて俺が欲しいって頭の中はいやらしいことで一杯なはずだ」
「……で、でんわを切ります」
私は動揺して通話ボタンを切った。下着と靴を履いて、そのまま地下室から出て行こうとすると、ギィと部屋の奥の扉が開く音がした。
「待て、と言ってるだろう」
呼びかけられると、スーツ姿のご主人様がそこに立っていた。
「ど、どうしてここに……仕事じゃないんですか」
「あれは嘘だ。お前を試した」
カツカツと靴の音が部屋に響き、私とご主人様の距離は近づいていく。逃げなきゃ、扉を開けなきゃ。そう思っても、ご主人様の瞳を見ると、立ちすくんでその場から動けない。
やがてご主人様は私の目の前に立った。上から見下ろされ、何をされるのか分からない恐怖で目をつむる。
でも、ひどいことは何もされなかった。
腕が背中に回ってきて、抱き締められた。優しく、包み込むように。
「お前が俺を想って一人でしてるなんて、可愛くて堪らない。良い子だ」
ゆっくりと髪を梳かれる。鼻をかすめるのは、ご主人様のいつもの匂い。煙草と、香水がまじった匂い。
「今お前は首輪をつけていないんだから、もうご主人様と言わなくても良い。銃兎さん、って呼ぶんだ」
私がためらっていると、指で顎を持ち上げられ、唇が重なった。歯の裏をなぞられ、舌を吸われ、絡められ、唾液を流し込まれる。私はご主人様とのキスに、弱くなっている。
「出来るだろ、これは最後の命令だ」