第1章 <1-1>入間先輩の歪んだ劣情
――体を拘束されている不快感で目を覚ます。
両手首と両足首には手錠をかけられ、口には猿ぐつわをつけられている。視覚、聴覚、嗅覚は自由で、私は体をねじって自分がどこに居るのかを確認しようとした。
どうやらここはラブホテルの一室のようだった。
何故か私は婦人警官のコスプレをさせられていて、寝ているのはクイーンサイズのベッド。
部屋の内装は黒とワインレッドが印象的なシックな雰囲気。他にも部屋を見渡せるガラス張りの浴室、大きなテーブルにソファ、壁掛けのテレビ、冷蔵庫などが備え付けられている。
ベッドの真正面にある壁掛けのテレビではアダルトビデオが流されていて、男女の生々しい交わりが映されている。そして、テレビの前のソファに、黙ってテレビを眺めている男性が一人。
その後ろ姿には、見覚えがある。チャコールグレーの髪、ソファの背もたれからのぞくグレーのワイシャツの襟、ゆらゆらと立ち上るたばこの煙。
間違いなく、入間先輩だ。
「んーっ、んーっ」
思い通りにしゃべれなくて、必死に声を出すと、先輩は私が起きたことに気がついたのか、ビデオの再生を止めてソファから立ち上がった。
「ああ、目が覚めたんですね」
ジュッと、灰皿にたばこを押しつける音が聞こえ、ソファから私のところまでやってくる。
なんでこんなことになってるんですか、と目で必死に訴えかけると、先輩は口許を歪ませた。