第4章 花火大会
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どうせ朔斗は待ち合わせに遅れてくるだろうから、ぴったりの時間まで家でテレビを見て過ごすことにした。
昔は、少し早めに家を出て待ってたりとかしたけど、どうせあいつは遅れてくるんだもん。待ってるだけ損な気分になるから早めに出たりはしない。
なのに、玄関を開けて外に出ると、家の塀に寄りかかってスマホゲームをしてる朔斗がいた。少し俯いてる感じがまたかっこいい。あ、朔斗ってスマホゲームとかするんだ。とか頭の中で独り言を漏らしてみる。
朔斗は携帯電話というものを最大限に使いこなせない人だと思ってたけど。
ちょっとだけそのまま朔斗のことを盗み見た後、わざと音を立ててドアを閉める。その音で私に気づいた朔斗が顔を上げる。
「あれ?朔斗が待ち合わせの時間にいるなんて、雪でも降る?」
ちょっとからかってみたから、いつもみたいなツッコミを期待してみるけど、朔斗はずっと私をみたまま止まってる。なんか、ぼけっとしてるから心配になるじゃん。
「朔斗?大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫。その…」
また朔斗は黙る。
これは本当に大丈夫かな?ってまじめに心配し始めるじゃんか。ちょっと朔斗の顔を覗いてみると、眉間にシワが寄ってる。何か考え事かな?それとも、体調悪い?
「朔斗?本当に大丈夫?熱でもある?」
流石に朔斗がいつもと違すぎる。だから、体温を確かめようと思って朔斗の額に手を伸ばそうとしたけど振り払われた。
少しだけ赤い顔を隠すみたいにして自転車に乗った朔斗を不自然だと思いつつ、首を傾げる。
「大丈夫だって。熱なんかねぇから。少し夏の暑さにやられただけだから。ほら、行くぞ。乗れよ。」
このまま乗らなかったら置いてかれそうだし、本人が大丈夫ならいっか。
そう無理やり納得して自転車の荷台に乗る。
どこに掴まるかを悩んだ末に、サドルに掴まることにした。
本当なら、朔斗に抱きつきたいけど、付き合ってもいないのにそんなことできるはずもない。