第2章 自覚
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私は入学式が始まるまでは大人しく教室で待ってることにした。
携帯であいつのクラス聞くのもありかなって思ったんだけど、何せあいつは携帯を持ち歩いてるくせに見ない。とりあえずはポケットに入ってるけど程度のものとしか考えてないんだ。きっと。
だから、入学式では名前が呼ばれるだろうからその時に確認するつもり。
だったのに。
「日向ーー!」
「朔斗?」
あいつ、朔斗は私の教室に乗り込んできた。
「ネクタイやってー」
「ちょ、声でかい。なんか恥ずかしい。こっち来て!」
しかも理由がネクタイやってとか、本当にバカ。
そうだよね。あいつはスポーツ推薦だった。根っからのバスケバカだったよ。
とりあえず、周りの視線が痛い。なんとかしてあいつをここから連れ出さなきゃって焦って、思わず腕掴んで走ってきちゃった。これの方が視線集めてない?て気づいたのは走り出した後なのだからもう仕方ない。
「おい、なんだよ。」
「わかんないの?あんた、人を惹きつけやすいのに入学式当日から私と仲良いってバレたら、私の平穏な生活がなくなるじゃない。」
「平穏の生活?」
そう。平穏な生活。中学は、小学校のときの友達がいたからなんとかなったけど、知り合いがいない中、朔斗ファンにつけまわされたりとかしたら……………私死ぬ。
こいつ、自分がめちゃくちゃモテるってことに気付いてないからなぁ。
「そう。平穏な生活。朔斗と仲良くしすぎると、朔斗ファンから…いろいろ大変なのよ。」
「俺のファン?そんなのいるわけないじゃん。何言っての?お前。」
「今はいないかもしれないけどそのうち現れるよ。」
「そうかなぁ?」
「そうなの!」
「まぁいいや、ネクタイやって。」
仕方ないから私は自分のネクタイを解いて、やり方を見せながら一緒に結んでやった。