第1章 恋人
朝目覚めると彼はいなかった。
昨日の記憶が蘇り1人赤面するも、あのまま寝てしまったのだと理解する。
周りを見渡すとここが自分の部屋ではないことに気づいた。
運んでくれたのか…
こんな些細なことで喜んでいる自分は随分絆されているなと思う。
リビングへ出るとメモと共に朝食が視界に入る。
─おはようございます。今日は休みなのでゆっくり休んで下さい。どこかに出掛けるときは連絡して下さいね─
相変わらず世話焼きな彼である。
朝食を食べ終え、ソファに腰掛ける。テレビを付けるが特に気になるものもなくすぐに消した。
なにをしようか。
普段の休みはベッドでだらだらしてスマホを触ったりしているが今日は起きたのが自分のベッドではなかった。そのせいかわからないが目ははっきりと覚めているし、もう一度ベッドに戻ろうとも思えなかった。
ポアロに行ってもいいと思ったが昨日の朝行ったばかりだ。
しかも今日は日曜日。ポアロはいつもより混んでいるだろう。自分が行っては仕事を増やしてしまうに違いない。
1人で悩み続けたが結局いい案は浮かばなかった。
でもこのままなにもしないでいるってのも…
ふと窓の外を見た。お出かけには持ってこいの晴天だ。
昼ご飯の材料でも買いに行こうかな。
したいことも特に思いつかなかったのでスーパーでゆっくり昼ご飯のメニューでも考えようかと思い自分の部屋に向かった。
軽くメイクをして大体の予算を考えながら玄関へ向かう。
あ、連絡しなきゃ
バッグからスマホを取り出し、安室透の連絡先を開く。
─スーパーに行ってきます─
スマホをバッグに戻して玄関の扉を開けた。