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恋と麻薬【名探偵コナン】

第27章 見えない心


おかしいですよね、とカホはぎごちない笑みを浮かべて呟く。


「前にも言ったと思いますが、僕はカホさんのことが好きですよ。もちろん1人の女性として。
僕が出会った中で貴方ほど魅力的な人はいませんし、これほど守りたいと思った人もいません」

カホとキッチンを挟んで少し離れたところから安室はカホの目を見て言った。

カホはそうですか、と呟いて安室から目を逸らした。
視線を空になったコップへと移し、それを見ながら先程の安室の言葉を思い出す。

カホはキッチンの下で拳をぎゅっと握った。




「カホさんが聞きたかったのは、こう言った言葉ではありませんでしたか?」

そうですか、と呟いて俯いてしまったカホに安室は尋ねた。

カホは顔を上げて、安室の方を見て首を横に振った。

どこか悲しげで、どこか辛そうで

そんな風に目を細めて、カホは笑みを浮かべていた。






「安室さんは、私がこうして欲しい、と言ったらその願いを叶えてくれますか」


「好きな人の願いなら、何でも叶えてあげたいと思いますよ。もちろん僕が可能な範囲でですが」


「…なんだか、安室さんらしいですね」

「僕らしい、というか僕がこう思うのはカホさんだからですよ」

「そう言ってもらえるなんて、私は幸せ者ですね」

「なんだか本当に今日はいつもと違いますね、カホさん」


軽い口調でそう言ったが安室の表情は真剣だった。
この会話に何の意味があるのか、どこかカホのペースに乗せられている気がして安室は掴みどころが無かった。


「私、安室さんに1つお願いしたいことがあるんです」



カホはそう言ってキッチンから出て安室の前に姿を現した。

安室から距離をとって、でも安室の直線上にいるように。



安室は目の前のカホの光景に目を見開いた。


「なに、してるんですか」




カホは首元に感じる冷たい金属の感触を敏感に感じた。
震えた手では今すぐにでも血管を切ってしまいそうで、カホはそれを握る手に力が入る。



「私の願い、聞いてもらえませんか」


安室の目の前で首元に包丁を当てた彼女は、はっきりとそう呟いた。



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