第27章 見えない心
安室はカホと杯戸小学校で出くわして以来、1度もマンションに戻ることはなかった。
因縁の相手とも言える赤井秀一の消息を掴む一歩手前まで差し掛かっていたからだ。
安室は赤井秀一と工藤邸に住む大学院生の沖矢昴が同一人物であると推測した。
沖矢昴本人に直接それを問い詰め、首に巻かれているであろうチョーカーを確認しようとした所で安室の期待は裏切られた。
自分の推測に自信を持っていた安室はまさかの光景に表情が崩れる。
さらに来葉峠では安室の部下から赤井秀一が現れたとの連絡が入る。
電話越しに赤井から安室に告げられたのは安室透の本名である
降谷零、という名前。
結果、赤井を捕まえるどころか自分の正体を知られることになった安室。
赤井の死の真相には江戸川コナンという少年も関与していると見ていた安室は後日ポアロにやってきた彼の発言にも驚くことはなかった。
数日間家を開けていた安室は久しぶりにカホの待つ家へと帰る。
と言っても今は夜の10時を回っている。
カホとゆっくり話せるのはまた今度になるかもしれないと思いながらも部屋へと進む足取りは軽い。
鍵を開けて玄関の扉を開く。
ただいま
そう言おうとした安室の口からその言葉が発せられることは無かった。
家の中の明かりがついていなかったからだ。
目の前の光景に安室はかつての状況が蘇った。
カホが自分の家を出て行った、あの時の様子が。
まさか…
安室は急いで部屋の中へと入ってリビングの明かりをつけた。
パッと明るくなった室内にはソファに座っているカホの姿があった。
「あれ……あ、安室さん。おかえりなさい」
カホは急に明かりのついた部屋を不思議そうに見渡して、その中にスーツ姿の安室を見つけた。
久しぶりに見た彼の姿にカホは安堵した。
けれど安室の表情はなんだかおかしかった。
焦っているような、そんな表情。
ここに来るまで走ってきたのだろうか、それとも何かもっと別の…
カホがそう考えていると安室が口を開いた。
「しばらく帰れなくてすみません…。それより…どうしたんですか。明かりもつけないで、それに、その服装も」
「え?」
カホは安室に言われて自分の服装を確認した。