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恋と麻薬【名探偵コナン】

第25章 はじまりは小さなカフェで


カホ、と言うのか

赤井はカホの事をいつもカフェの店員、もしくは彼女、と自分の中で呼んでいたため名前を聞いたのは今が初めてだった。
アーサーの質問の答えを盗み聞きしたようでなんとも言えない気持ちだったが、カホ、と彼女の名前が知れたことを赤井は新鮮に思った。

「カホちゃんはさ、いつもこの時間に働いてるの?」
「いつも、と言うわけではないですけど…そうですね、大体この時間です」
「じゃあ今度からこの時間に来るようにしよっかな」

アーサーはカホの目を見てそう言った。
カホは一瞬表情が固まった。
カホはお客さんに対していつも居心地の良い場所を提供できるように、と笑顔を絶やさず、お客さんが何を望んでいるのかなるべく早く気づけるように心に留めていた。

だからこの時、カホはアーサーのその言葉の意味を憶測でしかないが予想できた。
自意識過剰かもしれない、と思うも、目の前で微笑んだまま目線をばっちりと合わせられてはその選択肢を完全に否定することはできなかった。
カホは久しぶりにお客さんに対して恐怖、という感情を抱いた。


けれどカホにとって今はここにいる誰もが大切なお客さん。
お客さんを不愉快にさせるなんてことは決して出来ない。

カホはすぐさま笑顔を作って言った。

「お待ちしていますね」

カホにとってはこれが精一杯の言葉だった。


しかしアーサーはそれを勝手に都合の良いように解釈した。
またカホに会いにきてもいい、その許可を出されたようなものだと。
カホにとってはあくまでもお客さんの一人として言った言葉だと言うのに。

「ねえ今日はさ、何時まで働いてるの?」
「えっと…、7時ぐらいまでです」
「へ~、結構遅いんだね」
「そ、そうなんですかね」
「遅いよ!もしかして帰りはいつも1人で帰ってるの?」
「はい、」
「そんなのだめだよ!いやぁ、危ないなぁ…。そうだ!今日俺がカホちゃんの帰り待ってるからさ、帰り送って行ってあげるよ!」
「そ、そんな!大丈夫です!」
「遠慮しなくていんだよ、俺車だしさ」
「その時間はまだ空も明るいですし、全然1人で帰れるので」
「そう思ってる子ほど危険な目に合うんだよ?」
「でも、そんな、」


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