第23章 信用できる人
「…さん…カホさん」
誰かに名前を呼ばれたと思い目を開けるとそこには安室さんがいた。
「こんなとこで寝てたら風邪ひきますよ」
身体を起こすとパサッと上に被せてあった毛布が床に落ちた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
外を見るとついさっきまで見ていた青い空は赤く燃え上がっていた。
「あ…ごめんなさい…。ご飯の支度…」
「その状態で包丁なんか持たせられませんから。カホさんはここでまだ休んでてください」
そう言って安室さんはスーツを脱いでキッチンへと向かった。
今日は帰ってくるの早かったんだ
手を洗って冷蔵庫を確認する彼を見てそんなことを思った。
「あの…安室さん」
「どうしました?」
「やっぱり…これ外して欲しいです。色々と不自由だしご飯もちゃんと食べれません」
「ご飯なら僕が食べさせてあげるので心配いりませんよ」
「…!…外してくれないなら私は一切目の前の料理を食べません」
「それで困るのはカホさんですよ?」
「別にそれでもいいです。そしたら今日はもう寝ます」
「困った人ですね…」
やれやれ、と言うよな表情を浮かべた安室さんは一旦彼の部屋へと向かい直ぐに戻ってきた。
そして机の上に1本の鍵を置いた。
私はそれをすぐに取った。
しかしそれを掴んだと思えば上から彼の手が重ねられて手を引くことも出来なくなった。
どうして…と思えば安室さんはニコッと笑っていて
「退けてください…その手」
「カホさんがここから逃げないという保証はあるんですか?」
「そんなの…どっちにしろ安室さんはここから出してくれないでしょ」
「それはカホさん次第ですね。もし僕の言うことを素直に聞いてくれれば明日の出勤は許可しますし外出も自由にしていいです。もちろん今カホさんの手の中にある手錠の鍵だってお渡ししますよ」
「…何をすればいいの」
「そうですね…カホさんからのキス、とか」
ここに、と安室さんは自分の唇をトントンと指で叩いた。
私から彼にキスするなんて一緒に住んでた時もあんまりしたことはない。
恥ずかしいし、彼みたいに上手くはできない
けれど…今の状況から解放されるなら
「してくれますか?」
「…するわ」
そう言うと目の前の彼はまた微笑んだ。