第17章 重なる※
次の日の夜、カホは自室で一人悩んでいた。
熱も下がって体も元通りにまで回復した。
明日からは普通に出勤する予定でいた。
ただひとつ問題があった。
カホは昨日、一昨日とお風呂に入っていない。
明日は会社に行くのだ。
この状態のまま仕事先に行くことにカホは抵抗があった。
しかしカホは右手首を負傷している。
捻挫と言っても階段から落ちた時に頭を庇って強く床に打ち付けたもの。
動かすとかなりの痛みが走る。
それにお風呂に入るとなると右手が使えないのは色々と支障を来す。
どうしよう…
そんな時だった。
「カホさん、入っても大丈夫ですか」
扉の向こうから沖矢の声がした。
「はい、大丈夫です」
カホの返事の後で沖矢は中に入ってきた。
「明日の事なんですけど会社の行き帰りは私が送るので時間をお聞きしようと」
「えっ、あ、大丈夫ですよ。足とかじゃないですし」
「荷物持つの大変でしょうし、何かと安全ですから」
「でも、そこまでしてもらう訳には」
「カホさん」
「はい」
「好きな人に頼ってもらうのは、喜びの何物でもないんですよ」
私にとっては、と昴さんは言った。
もう十分頼りすぎている気がするんだけどな。
「私がしたくてやっていることなので、カホさんは遠慮なんてする必要ありません」
「…はい」
私が答えると昴さんは、それでいいんですよ、と笑って言った。
「ところでカホさん」
「はい、」
「お風呂、今日は入りますか?」
「あ、それ私も思ってて…でもこの手じゃ色々と無理かな、と」
「タオルか何かで拭くのはどうですか?」
「…!そっか、その手がありましたね」
お風呂は包帯が汚れるからどっちにしろ入れなかったけど、これなら大丈夫そう。
カホは沖矢と明日の事を話し合った後、タオルと洗面器を自室へと運んだ。
準備が整って服を脱ごうとした。
そこで問題が起きた。
服が脱げない
上まで捲っても手を出すことができない。
カホは焦った。
服の下から拭くこともできるがそれでは服を濡らしてしまう。
どうしたら脱げるの
その時カホの頭には一人の人物が浮かんだ。
─好きな人に頼ってもらうのは、喜びの何物でもないんですよ─