第3章 居場所
「カホ!あんたいつまで寝てんのよ!起きなさーい!」
ぼやーっとする意識の中に誰かの声が聞こえる。
「早く起きないと仕事遅れるでしょ!」
仕事、?仕事…
今何時…!?
一気に覚醒した私はガバッと上体を起こして時計を探す。
「やっばこんな時間…!」
「だーから早く起きなさいって何度も言ったのに!」
隣を見ると不機嫌な顔をした母が私を見下ろしていた。
バタバタと支度をする。メイクをするも時間がないのですっぴんに近い。
騒がしく階段を駆け下りリビングへ繋がるドアを開ける。
「おはよう、お父さん!」
「おはよう、カホ。なんだー、?寝坊かー?」
新聞を広げながら慌てて入ってきた私を見て馬鹿にするように笑う。
「もう、笑い事じゃないんだからね!」
私は席に座ってこんがり焼いてあるトーストにかぶりつく。
「そんな慌てて食べたら喉詰まらせるわよ」
「これぐらい急がないと遅刻するわ」
母は呆れたようにコーヒーをいれ、私の前にコト、っと置いた。
「行ってきます!」
上着を手に抱え玄関を飛び出した。ヒールがなんとも走りにくい。息があがってきたが遅刻して上司に怒られることを考えるとより走る速度が上がった。
「おはようございます!…はぁ、はぁ」
「おー、おはよう!なんだー?寝坊か?」
「ええ、まあ…」
朝お父さんに言われたセリフが蘇った。
「まあ、でもラッキーだったな!今日まだ課長きてねーから!」
よかった…今日はついてる…
私の隣のデスクに座る上司、深山さんは親指を立ててグッドサインを出す。
自分の席に座り、身体を休めたところで課長が来た。
ほんとに助かった