第14章 訪問者
あ、また…
カホは再び彼のことを思い出していたことに気づく。
思い出さないようにしていたのに、
カホは少し自分を悔やんで、目の前の空になったグラスを見つめた。
「おかわり、いりますか?」
「…あ、はい!飲みたい、です…」
「そうなら言ってくれればよかったのに」
カホはおずおずと沖矢にグラスを渡す。
沖矢は慣れた手つきで先程と同様ジュースとウイスキーを混ぜ合わせていく。
この時、沖矢はさっきよりも多めにウイスキーを混ぜた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「また飲みたかったら声掛けてくださいね」
カホは渡されたグラスに口付ける。
あーやっぱり美味しい
自分でも作れるようになるかな
「昴さん」
「なんでしょう」
「これ、私でも作ることできますか?」
「ええ、簡単ですからね。じゃあ次は自分で作ってみますか?」
「是非そうしたいです」
カホはそれを飲み終えると沖矢の指導のもと自分でカクテルを作った。
初めてにしては良くできた、とカホはそれを自賛した。
自分で作れるようになったことでカホはお酒のピッチを上げた。
ウイスキーの味に慣れてきたのか、お酒の割合を段々と上げていた。
「カホさん」
「なんですか?昴さん?」
「少し飲みすぎではないですか?」
「えー?そんなことないですよー。だってこれ、オレンジジュースですもん」
「酔ってますね」
「オレンジジュースで酔うわけないじゃないですか」
お酒を飲み始めてしばらく経った頃、カホは少し顔を赤くしてグラスに入ったそれをチビチビと飲んでいた。
沖矢がカホにお酒を勧めたのは彼女が先程から気になっていることを聞き出すためであった。
酔いが回った彼女は普段より警戒心が無くなり、喋りやすくなるのだ。
だから彼女をいい具合に酔わせて聞き出そうと思ったのだが、これは…
酔いすぎだな。
オレンジジュースってこんなに美味しかったっけー?と目の前のグラスを持ち上げて言っている彼女にどうしたものかと思い悩む。
まあでも、自分はこの状況を望んでいたわけで、
お酒の力を借りるなど意地汚い手だとは思うがこの方法が一番確実だと言えた。
再びグラスにウイスキーを注いでる彼女に沖矢は尋ねた。