第2章 お酒
「あ、すいません、可哀想なニュースですね。お子さんの誕生日になんて…」
「本来は祝うべき日だったんですからね。残された家族の心情を思うと、胸が張り裂けそうです。」
コメンテイターの男性が机に置いた両手をぎゅっと握ってそう呟いた。
残された家族
今、彼女の旦那さんと息子はどう思っているのだろうか。
愛する妻、母親が急に亡くなって悲しみにくれてるのか。
彼女を轢いた容疑者に恨みを抱いているのだろうか。
それとも、何も考えられないのだろうか。
─次のニュースです…─
アナウンサーの声が聞こえてテレビを消した。
ソファから立ち上がって浴室へ向かった。
シャワーを浴びてラフな格好に着替える。
キッチンに向かって冷蔵庫からペットボトルを取り出してキャップを開けた。
喉を通る冷たい水がどこか身体を落ち着かせた。
まだ寝るには早すぎる
自分の部屋から小説を持ち出しソファに腰を下ろした。
数十ページ読んだところでさっきのニュースが頭に浮かぶ。
今日は本に集中できないな
そう思ってしおりを挟んで本を閉じたところでだんだん睡魔に襲われた。
少しぐらい横になってもいいか
私は体勢を横向きに変えてソファに身体を預けた。
瞼が下がってくるのにそう時間はかからなかった。