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恋と麻薬【名探偵コナン】

第11章 出会い


時々彼女の体は震え、肩は段々と濡れていった。

彼女が涙を流し終えて落ち着くまで、俺は彼女をずっと抱きしめていた。


「…ごめんなさい。もう、大丈夫です」

彼女はそう言って俺から離れた。
彼女の目は赤くなっていた。

俺は冷蔵庫から保冷剤を取り出し、タオルに巻いて彼女へと渡した。

「そのまま寝たら、腫れが残っちゃいますからね」
「…ありがとう、ございます」

彼女はそれを受け取った。






「安室さん、さっきは本当にありがとうございました」

お風呂を上がって寝巻き姿の彼女にそう言われた。

「いえ、僕でよければいつでも肩を貸しますよ」

俺は微笑んで言った。


彼女は少し笑った。


初めて見た、彼女の嬉しそうな表情だった。



彼女は自分の部屋のドアノブに手をかけたところで俺の方を振り向いて言った。

「おやすみなさい」

彼女はドアを開けて向こう側へと消えた。


昨日は言わなかった言葉。
俺の体温が少し上がったことに気づくのは、そう難しいことではなかった。

少し、壁が薄くなったな。
自分に笑顔を向けてくれたこと、そんな少しの事でさえ今の自分には嬉しかった。














彼女が俺の家に住んで数ヶ月がたった頃、相変わらず彼女との壁はあるが、関係は比較的良好なものだと言えた。

最初にこの家に来た時より、表情は明るくなった気がするし会話も増えた。

時には夕飯を作ってくれて、レシピを教えあったりもした。



その日も彼女は仕事へ出かけた。
俺は彼女の背中を見送る。


彼女とは適度な距離を保っていた。
恋人、というよりはルームシェアをしているという感じだった。

お互い余計な触れ合いもしなかった。

彼女は今の関係に恐らくそこまで不満ではないだろう。



ただ、俺としては、彼女が近くにいて彼女の香りがふわっと漂ってくるとその度に彼女に触れたいと思っていた。


好きな女と一緒に暮らしているんだ。
そう思ってしまうのは許してほしい。


ただ、ここで手を出してしまって今までの関係が崩れるのは避けたかった。
せっかくここまでやってきたのだから。


今はまだ手を出してはいけない。







そう思っていた。

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