第20章 羨望
寝転んだまま実弥に向き合い、ことの発端について話をすると、彼は呆れたようにため息をついた。
「あのなぁ、胡蝶とはそんなんじゃねえよ。俺にはお前がいるだろーが。」
「………わかってますよ…。」
「わかってんなら何で怒ってんだよ。」
「いや……。別に…。」
「怒ってんだろ。」
実弥がじっと見つめてくる。私は視線をそらしてうつむいた。
「……だって…。カナエは…。」
言いにくい。
ていうか私は何を拗ねていたんだろう。最低だ、親友をそんな目で見たりして。私の体とカナエは何にも関係ないのに。
「………ハァ」
実弥が大きなため息をつく。
…呆れられても仕方ない。最低なことをしてしまった。
「バカタレ」
実弥が一言そう言って、私の頭の上に優しく手を置いた。
「言ったろ、俺はお前と一緒にいたいって。」
「実弥…。」
「体質のことだからな…気にすんなとか、諦めろとか、もう言わねえ。だから昨日や今日みたいなのは勘弁してくれ。正直へこむからよ。」
そしてそっと私の頭を撫でた。
「胡蝶は俺にお前のこと聞いてきただけだ。疑ってやんな。」
「え?カナエが?」
「アイツ、知ってたみたいだぞ。」
……あぁ、そっか。
「高校の時…初めて、妊娠できないってわかったときにちょっとだけ相談したことがあるんだよね。…まさか覚えてるとは。」
「…お前の話すげぇ聞きたがるんだよ。でも変な噂たってんならまずいな。悪ぃ、気をつける。」
「いいよ。冨岡くんにも言われたけど、疑うのやめる。私がバカでした。」
「冨岡の話すんな。」
「仲良くしてよ。」
しばらく会えていないカナエの顔が浮かぶ。……良い友達を持ったなぁ。
学生時代がなつかしくなってきた。