第18章 これから
目を覚ました。
夢に良く出てくる……あの阿国って人、子供、いたんだ…。
出産…したばかりだったな。
痛いのかな。自分で産んだ赤ちゃん抱っこして、すごく幸せそうだった。女の子と男の子だったな、いいな。旦那さんも嬉しそう。
私は何だか寂しくなって、寝返りを打った。
実弥がいる方を向けば、すやすやと眠った彼が見えた。
かけ布団の下にある体は、筋肉がついていてたくましい。本当に高校教師か?引っ越し業者か事務のトレーナーじゃないのか??何でそんなに筋肉がつくんだ。死ぬほど羨ましい…。
こちとら前世から太れない、筋肉がつかないで大変だったんだ。無茶しすぎたせいで20歳から筋肉が衰えて体にガタがきて。
痣なんて出なかったけど、多分、鬼殺隊としてはもって25歳までだった。桜くんの薬、飲んで正解だったかも。
ああ、何でこんなこと考えてるんだ?もう何もかもあの夢のせいなんだから。
他にこの暗い部屋で見るものもないので改めて実弥を見つめる。
彼の体についているのは筋肉だけではない。痛々しい無数の傷痕。本当に痛くないのかと聞いたことがある。
『ちょっと変な感覚があるが、それには慣れた。痛くはねえ。』
それを聞いたとき、私と同じだとわかった。
私も前世では彼に負けないくらい怪我をした。その分傷もあった。隊服で隠れていたけれど。
実弥は、前世と同じく傷があるけど私には傷がない。不思議だ。神様の気まぐれだろうか。
何だか思考がボーッとして考えがまとまらない。…肌寒いや。……でもかけ布団も冷えきってる。カイロかなんか……。
春とはいえまだ寒い季節だ。そのうち夏になって、暑いとか言うのに。寒さに飽きた人間はワガママに夏を待ちわびる。そして、夏の終わりには冬の到来を願うのだろう。
バカみたいなことだけど、バカみたいなことが普通。
誰だって、夏が暑くて冬が寒いのは嫌だ。風情とかどうでもいい。
はやくきてくれ、夏。
私は今とりあえず、暖かいものがほしい。