第16章 憂い
「昨日は話聞いてくれてありがとうございました!!」
起きてすぐ、寝癖爆発の状態で三人に頭を下げた。
朝の準備をする三人はぴたりと動きを止めた。
「帰ったら実弥とたくさん話をしようと思います!!」
「…ッうんうん!!それが良いと思う!!全力で応援するよ、頑張って!!!」
須磨さんがぎゅーっと抱きつき、またまきをさんに怒られた。けど、まきをさんも笑って励ましてくれた。
「じゃ、旅行最終日、全力で楽しもう!!」
「わ~い!!」
そう。今日で私達は旅行から帰宅する。
夕方くらいには帰るから、私も覚悟決めなきゃ。
決意とともに寝癖を直し、私は朝の準備を始めた。
旅行の終盤と言えばやることは決まっている。
「お土産~!!」
皆おおはしゃぎで土産店に飛び込んだ。
「私は実家と実弥にだけでいいかな…」
「え?それだけ?」
「職場が家なので、同僚とかいませんし。」
自由だし仕事に融通がきくけれど、少し寂しい。
「完全にフリーでやってるの?」
「最初は会社で雇ってもらってたんですけど、自立できるようになってやめちゃいました。おかげでめっちゃこれです…。」
「指でお金マーク作るのやめなさい。」
なので、公務員の実弥よりは稼いでいる。でも彼の方が収入安定してるから、羨ましいなあ。
実家にはこの地域限定味のクッキーで……実弥はクマのぬいぐるまにしよう。でかいやつ。
「え、それ?」
「強面なんだからこれくらい持っててちょうどいいんですよ!」
私はだいたい、遠出したときのお土産は可愛い缶バッチとか、マスコットのキーホルダーとかを渡している。すぐに捨てるだろうと思ったら全部とって、自室の机とか棚に飾ってる。
仕事道具と服しかない私の部屋より可愛い部屋になってるのを見て、密かに笑ってるのは私だけの秘密。