第79章 君を呼ぶー最終章ー
「」
名前を呼ぶ。
返事はない。
けれど。
ほんのりと、握りしめた手が暖かくなるのを感じた。
「……。」
俺の体温かもしれない。
けれど、そうではないと思いだかった。
「」
なあ、お前、いつだって俺のそばにいたじゃねェか。
喧嘩しても、俺が泣かせても、お前がわがまま言っても。
ムカついてもう顔も見たくないって思っても、話したくないって思っても。
『実弥』
お前が、俺の名前を呼んでくれたから。
だから。
声が聞きたい。笑った顔が見たい。下手くそな料理が食いたい。死にそうになりながら仕事をしている背中が見たい。おかえり、ってお前が言ってくれる家に帰りたい。触れたいし触れられたい。
ちゃんと名前を呼ぶから。
みんながお前の名前を呼んでいるから。
だから。
帰ってこい。戻ってこい。
ここで死んだら、永遠にあの時代の中だ。
一緒に未来に行こう。
未来に。
「、聞こえてるか?」