第77章 名前を探して
朝、いつもより早く目を覚まして俺は驚きのあまりフリーズした。
「…は?」
阿国がすぐ側ですうすうと寝ていた。
しかも、俺の腕の中でだ。
嘘だろ。
「お、おお、阿国」
「……ん…」
阿国は目を擦った。
「せんせ…おはよ、ござま…」
「…何でこんなことになってんだ……??」
俺が聞くと、阿国はふふっと笑った。
「先生、布団私に貸してくれてたでしょ?お部屋に入った時敷布団しかなかったもん。だから、寒いかなーって。」
「……。気にすんな、そんなこと。」
「ふふふ」
阿国はクスクスと笑い続けた。
「可愛かったなあ、寝ぼけてる先生」
「は」
「うふふふふふ」
その言葉に俺は心臓が止まりそうだった。
「…俺、まさかお前に何かしたとかじゃないよな?」
「そんなことないですよ。でも、この状況がどうかはわかりませんけど…。」
阿国はニヤリと笑う。
あ〜〜〜クソクソクソッ!!!!!
とりあえず阿国を腕から解放し、距離をとった。
「ええ〜大丈夫ですよう、先生ったら優しくて…きゃっ。」
「やめろ…やめてくれ…!!」
「抱きしめられてるのに全然寝苦しくなかったも〜ん。しかも寝顔可愛いから…。うふふッ。」
恥ずかしいやらやらかしてしまった自責の念やらで俺は頭を抱えた。しかしいつまでもそうしているわけにはいかず、仕事に行かなくてはならないので朝の支度を開始した。
朝ごはんにパンを焼いてやると、阿国は嬉しそうに頬張った。
「いいなあ、阿国先生のお家の子になりたいです。」
「アホか。今日こそは帰れよ。」
「わかってま〜す。」
……こうしてると、本当にそっくりだ。アイツと一緒にいるみたいだった。
「まあ、なんかあったら言いに来いよ。飯くらいなら食わせてやる。……泊まりは困るけどなァ。」
阿国はにこりと笑った。その笑顔があまりにもアイツと似ていたので、俺も思わず笑い返した。