第73章 どしゃ降りの雨
周りの教師にも何があったのか説明して、俺と胡蝶はくたくたになって帰宅した。
もう夜遅かった。外は真っ暗で、雨もあって車の運転が怖かったが何事もなく家に帰れた。
マンションのエントランスに到着して傘を畳んだところで、俺はあることに気づいた。
「……お前ら…何してんだ?」
そこにいたのは、阿国と時透の二人だった。
「お邪魔します」
時透が行儀よく言う。阿国はペコリと頭を下げて入ってきた。
「……とにかく、まあ、座れよ。」
俺はソファーを指差し、キッチンでお茶を入れた。
なぜこんなことになったのか。俺は頭が痛かった。
エントランスで会った時は帰れと怒鳴りつけたが、話したいことがある、話すまでもう帰らないと言われてしまって、外は大雨だから強くも言えずに部屋に入れてしまった。
「お前ら、家に連絡してんだろうな?」
「私は…家にいなくてもバレないので。」
「あ?」
「家で誰がどこにいるとか、皆把握できませんから。」
「……。」
そんくらい家がでかいってことか。さすが大きな神社のお嬢様だ。
「それに、親は兄さんのところに行ったと思います。」
「僕は連絡してあります。」
「ああそうかい。だからって教師の家の前に張り付くのはダメだがなあ。」
ひとまず、二人にお茶を渡した。
「何でわかったんだよ、俺の家。」
「私が。」
阿国はお茶をふうふうと冷ましながら飲んだ。
……。なるほど、その不思議な力で探したってことか。
俺は時計を見た。もう夜だ。あまり長居させたくねえが…。
「はあーーーーーーー」
ガシガシと髪を掻き毟って俺は二人の前に腰を下ろした。
「おし、もう俺は家に帰った。仕事はしねえ。今は教師じゃねえ。ただの不死川実弥だ。やかましいことは言わねえよ。」
「先生…!!!」
「ただし!!お前ら誰にも言うなよ!!!」
「うん、約束する!!」
「ありがとう、不死川さん。」
二人は嬉しそうに顔を見合わせた。