第72章 たそがれの
阿国の言葉は俺を焦らせた。
このままだとが死ぬと言われたことが頭から離れない。
あのあと俺が部屋に戻ると、また心臓の動きが遅くなっていると医師からの説明を受けた。
心音を告げる機械音を発するあの医療器具がまた取り付けられ、何だかロボットみたいにまたたくさんの管がからのびていた。
じいさんとばあさんは病室に残ったが、俺は胡蝶を送っていかないといけないし帰ることにした。
「………不死川くん、運転変わりましょうか?」
胡蝶がそう言ったが、俺は首を横に振って運転席に乗り込んだ。
「ありがとうなァ。」
俺はエンジンをかけながら後部座席に座る胡蝶に言った。
「今日は一人だとヤバかった。」
ついそうこぼしてしまい、まずかったかと思った。
「………ううん。」
けれど胡蝶の声は優しかった。
それがいけなかったんだ。
「悪い、しばらく時間いいかァ。」
振り返ると、胡蝶は微笑んでいた。
「いいわよ。………好きなだけ。」
俺は短く礼を言った。
そして、長い長いため息を吐いて項垂れた。
いつまでもいつまでもそうしていて、帰るときにはもう日が暮れそうだった。
胡蝶は何も言わなかった。帰り道は行き道と同じように色んなことを話すので、やはり退屈しなかった。