第68章 変わった生徒
それからしばらく、霞守は俺が祈っていると必ず後ろから現れて、俺のとなりで祈ってくれた。
毎夜毎夜、不思議な時間が日課となっていた。
さて、今日は金曜日だ。明日は休み。の所に行ける。
そんな静かな放課後の職員室は、胡蝶の発言で騒がしくなった。
「霞守くんって、不思議な子ですねぇ。」
生徒に対してそんな物言いはしない。けれど、その場に居合わせた数名は誰一人として否定ができなかった。
「あれだろ?あの、ヨレヨレのシャツの…一年の。」
「そうです。」
宇髄が反応する。
「この前、実験室で育ててる植物をじっと見ていたので何をしてるのかな~って思ったら枯れかけてる花をひたすら触ってたんですよ。」
「それが何なんだよ。」
思わず俺も口をはさんだ。胡蝶は俺に視線を向けて、興奮気味に答えた。
「今日その植物を見に行ったら元気になってたんです。本当に驚きましたよ。枯れて花びらも落ちかけていたのに、綺麗に咲いてて…。」
「そりゃ不思議っつーか不気味だな。でもよ、俺もそう思うことあるぜ。」
今度は宇髄が話し始めた。
「この前、模写やらせてたんだ。美術室にあった透明なガラス瓶をな。皆同じもん見てるはずなのに、霞守だけ出来上がったもんが違ったんだ。アイツ粉々に割れたガラスの破片描いてたんだよ。提出する時に『気をつけて』って言われてさ。」
すると、少し間を置いてからいかにもな雰囲気で話を続けた。
「そしたら、その日の放課後に美術部の部員が制服のスカートに引っかけてそのガラス瓶割りやがったんだ。」
「まぁ。」
「けっこう破片が飛び散って、粉々に砕けたんだ。…霞守の絵にそっくりだった。」
そんな話をしていると、いつの間にか伊黒も俺たち三人の中に入ってきていて、うんうんと頷いていた。