第67章 霞を守る者
「いますよ」
霞守はすぐにそう答えた。
「けど、先生のためにいるんじゃないです。俺のためでもないです。誰かのためじゃあないんです。」
目が不思議な色を放っていた。
少し、に似ていると思った。…いや、そっくりだ。まるで双子のように、瞳がアイツと同じだった。
「神様は皆の願いは叶えられないです。だから、自分が叶えられる願いを頑張って叶えてるんです。」
まるで神様と会って話して聞いたんだとでも言うように話していた。
「叶えられない願いに、神様はごめんねって謝ってるんです。どうか祈らないで何もできないからと、毎日謝ってるんです。」
俺は黙って聞いていた。
「神様はいるけど、俺ら人間よりよっぽど繊細で、存外弱者です。」
霞守はまた笑った。
「だから先生、許してあげてね。神様は、ごめんねって先生に寄り添って謝ってくれてるから、神様のせいにはしないでね。俺も毎日祈るから、お願いです。」
その笑顔が悲しげで、今にも消えてしまいそうで切なくなった。
不思議なやつだ。まるで、のような…。
「お前、アイツの親戚か何かか?」
思わずそう聞いてしまった。
霞守はそれを聞いて、少し困ったように眉を下げた。
「まさか。」
「でもアイツを知ってるんだろ?」
「まあ、そうですね。ちょっと難しいので言えないです。」
霞守は俯いた。…生徒の事情に踏み込むつもりもない。それに、も家族のことはあまり聞いて欲しくないようだったので、俺もたいして知らない。
「…悪かったなァ。夜にわざわざ俺を見かけて出てきてくれたんだろ?もう行くからお前も帰ンなァ。」
「ううん。俺、せんせがお気に入りなんだー。」
「あァ?」
霞守は何だか含みのある言い方をした。
「ありがとう先生。また学校で。」
「おう。」
俺は気になったがなにも言わず、そのまま帰った。