第10章 複雑
「今日の、朝?」
「ああ。女子旅計画してたのは知ってたけど、あと一人誰か誘うのにお前が良いって。」
嘘だ。
嘘、嘘、嘘。
「だってちゃんお仕事もお家なんでしょ?旅行行けてないんじゃないかって…。」
「……まあ…仕事は締め切りさえ守ればどうとでもなりますけど。」
「本当!?じゃあ行こうよ!!」
いやいや、それわかってて誘ったんじゃないの?違うの?
おかしくない?私ってそんなバカに思われてる?
……でも…。
私がこの人達の旅行に付き合って、私が損することって…多分ないよね。理由に関しては嘘ついてるみたいだけど…。
「実弥はどう思う?」
私は彼に聞いた。同棲してるから、聞いて当然だと思う。
「……………………良いんじゃねえか」
え?
何、その間。
行ってほしいの?行ってほしくないの?
そんなの、私、わかるんだよ。
そんなことも考えられないくらい、何かあるの?
「ちゃん?」
「あ」
…だめだ、だめだ、人がたくさんいるのに。
でもこれは…黙っていられないレベルにあからさますぎるんですけど。
「でも……今日はいきなりすぎるので、また今度でも良いですか?」
というと、明らかに全員のテンションが下がった。
「………。あの、さっきからバレバレなんですけど、私が旅行に行かないと不都合なことがあるんですか?」
この言葉に、須磨さんがひえっ、と声を出した。
全員が睨み付ける。
でも違う。
一番動揺したの、実弥だ。
「………あ~!お前に隠すの無駄だよな!そうだよな!!」
宇随先輩が大きな声を上げた。