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キメツ学園ー未来編【鬼滅の刃】

第64章 大正“悲劇”ー終ー


私はその存在に気付いた時、思わずその名を口にしていました。


「冨岡くん」


腹筋に力を込め、刀が抜けないように。冨岡くんが逃げないようにした。


「私……本当は…伝えたかったことがあるんだ」


いったい何を言っているのか自分でもわかりませんでした。けれど、私は確かにそう口にしていました。

私は息を吸い込んだ。


『冨岡くん』

『ごめんなさい』

『けれどね』

『私、こうするしかなかったんです』

『いつか、どこかで会ったら』

『どうか、私を許してね』


言い終わるか終わらないかのうちに、冨岡くんが話し始めた。


「離せ」


冨岡くんから焦りや不安や色んな感情が伝わってくる。


「離してくれ」


私は腹筋から力を抜いた。するりと刀は抜けた。


「冨岡くん、私は、約束があるのです。」

「……やめろ」

「先代の水柱の方との、約束が、託された未来があるのです。」

「もう、やめてくれ」


冨岡くんが後ずさる音がした。

私は振り向いた。


「ありがとう、冨岡くん。君は正しいのです。大丈夫。私は君のせいで死んだりしない。」


私は振り向いた。
冨岡くんは走り去っていく。


その最中に傷が癒えていく。


不思議な感覚が私を襲いました。なぜあのようなことを言ったのかわかりません。

まるで私が私ではないようです。


何か…何か大切なことを、私は忘れている気がしました。
けれどそれが何なのか、私は全く思い出せないのです。


傷が癒えていきます。


…?死なない?


なぜ。冨岡くんは私を殺しにきたのではないのでしょうか。頚を斬らないのはなぜでしょうか。

この後どうすれば良いのか。…それより、私は先ほど何と言った?


『私は君のせいでは死んだりしない』


……何を口走っているのだろう。

いったい何を言ったのだろう。自分の発言なのによくわからない。何と言ったのかいまいち記憶に残っていない。
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