第10章 複雑
「変な夢見た」
そう呟きながら起きた頃には、実弥は隣にいなかった。
私が寝癖を爆発させて、目をしょぼしょぼさせてパジャマのままリビングに行く。
そこで気づいた。気配が複数あることに。
「……何つーお目覚めだよ、霧雨」
「え……う、宇随…せんぱ…何で……」
「おう。嫁つれてきたから。」
彼が指差す方を見ると、決して広くはないリビングに彼の嫁…いや、実際には今はそんな結婚できないので、嫁ではないが。
あの三人がいた。
「ちゃんおはようー!」
「あんた、すごい寝癖ねえ…」
「本当に寝起きだわ」
「うええちょっとどういうこと!?あんたちゃんとこーゆーことは言ってよ!!バカッ!!!アホ!!!このべっちゃべちゃおはぎ!!!」
「そりゃお前が作るやつだけだろ。とっとと着替えてこい。」
スーツを着て余裕綽々とコーヒーをすする実弥。
くそ、墓穴掘った。
私は朝の支度をさっさとすませ、いつものお決まりスウェットとスッピンでリビングに直行しようとした。
が、姿を現す前ににゅっと部屋に実弥が入ってきた。
「ぎゃっ!なに!!」
「お前、仮にも客がいるんだから、ちゃんとした格好で出ろ。頼むわ。あと俺は何回も、朝起きてリビングに来る時は支度終わってから来いって言ってるだろ。わかったか。」
「ひゃ、ひゃい…。」
それだけを言って、さっさと出ていった。
私はあまりの彼の剣幕が頭から離れず、しばらく放心状態だった。