第62章 大正“幕引”ー終ー
私は右の拳を固く握りしめ、船の床板に叩きつけた。
「はあ!?」
宇髄くんがギョッとする。
バキバキ!!メキッ!!と言う音をたてて拳はめり込む。床板は原型もないほどに割れ、盛大に壊れた。
「は!?え!?ええ!?」
「よし!帰りましょう!!無一郎くんはどこですか?」
「待て待て待てどうすんだよこの船壊しちまって」
「給料から引いてもらいましょう。」
「ちょっ、霧雨さん!!」
私は船から降りて、陸の道を歩いた。
後ろから宇髄くんが追いかけてくる。
「無一郎くんは頑張ったみたいですし、帰りにおはぎでも買ってあげましょう。」
「おはぎ?何でですか。アイツおはぎなんて渋いの好きなのか?」
渋いかどうかは偏見な気がします。
…??
あれ?
なぜ?なぜでしょう。なぜそんなことを言ったのでしょう。
『おはぎ、お前が作ったのがうまいけどな』
「え?」
「ん?」
声がした気がしたが。宇髄くんではないでしょう。
…何なんでしょうか。
「……ひょっとしたら、私ものすごく疲れているのではないでしょうか…」
「まじかよ。…まあ普通にめっちゃ重症だしな。器用に呼吸が使える霧雨さんじゃなきゃ致命傷だろうよ。」
そうこうしているうちに、無一郎くんがいる場所に近づいた。私たちを見るやすぐに走ってきて自分が斬った鬼について報告してくれた。
「お疲れ様でした。一緒に蝶屋敷に行って、帰りにおいしいものを食べていきましょう。」
「はい、師範。」
「宇髄くんはいかがです?」
「俺はいいっすよ。おかげさまで無傷だし、このままお館様に報告だ。派手にな。」
と、親指をたてて言うので、私たちはそこで別れました。
……何でしょうか。
何か、大切なものを忘れている気がします。