第61章 大正“幕引”ー中ー
なぜか理由はわからないが、失踪事件が起こる。
必ず双子の片割れが失踪するらしい。そして、失踪した者は必ず同じ場所で目撃されたのを最後に消息を断つと言う。そして、しばらくしたら双子のもう一人もいなくなって戻ってこなくなってしまう。
この双子が揃って失踪する事件の調査を行なっていた隊士、隠の計10人ほどがまた消息をたったので、私がかり出された。
「状況は把握できましたか。任務中は私の言うことを聞くこと。逆も然りで、私が言うこと以外はしないでくださいね。」
「はい。」
無一郎くんは私の後ろをついてくる。
道案内をしてくれた隠が私たちを穴が開くほど見つめている。
恐らく嫌われ者の私が継子を連れていることに驚いているのだろう。
「それで、消息を断つ場所がここですか。」
「はい。」
無一郎くんが虚空を見つめている。
「うん。」
私はにこりと笑った。
隠の襟首を掴み、ぐっと後ろに引き下げた。
「っぎゃあ!!な、何をする!!」
「霞の呼吸」
素早く抜刀。
「弐ノ型、八重霞」
刀を振る。
目の前に鬼がいた。
しかし、隠の襟首を掴んでいたために届かなかった。
「逃げて!」
私は隠に叫んだ。
しかし、隠は呆然として動かない。
「逃げなさい!!ここは鬼の間合いです!!!一般人がここに来ないように動きなさい!!!」
私が怒鳴ると、さすがに動いた。
「霞の呼吸、肆ノ型」
えっ。
待って、ちょ、無一郎くん。
何を勝手に飛び出してるの。動くな。
君、それじゃあ…。
「馬鹿ッ!!!!!」
私は慌てて飛んだ。
違う。だめ。
無一郎くん。
「ぐっ」
「師範!?」
とっさに前に躍り出たが、右腕がやられた。
左腕で無一郎くんを抱えて後ろに飛んだ。
無一郎くんを降ろした。
「こんの」
私は無一郎くんの頬を引っ叩いた。
「大馬鹿者ッ!!!!!!!!!!!!!」
私は叫んで先ほどの鬼を斬ろうとした。
が、そこに鬼はいなかった。気配もない。
「クッッッソおおおおおおおおオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」
私は力の限り叫んだ。
「無一郎くん!!!!!」
私が振り返ると、頬を真っ赤にした彼がキョトンとしてそこにいた。
手加減する暇がなかった。…悪いことをしてしまった。